新しいパソコンへ引っ越したい。DTM環境のライセンス管理で気をつけたいこと
各種パソコンにおいてアップグレードを推奨するアナウンスを受け、大きな変化に戸惑ってしまった人や、うまくアップグレードができなくて見送ってしまった人。
中にはトラブルが発生してあきらめてMacや新しいパソコンに乗り換えてしまおうと考えた人もいるかもしれません。
今回はDTM環境を引っ越す際に注意しなければならない事について紹介しておきたいと思います。
もくじ
パソコンのバージョンアップによる弊害
自分もトラブルが発生して乗り換えを検討することになりました。
Windows7の時に構成して使ってきたパソコンでしたが、Windows10に移行したことでDAWの挙動が不審になってしまいました。
Windows7の頃はCubaseが落ちることなどまったく経験しなかったことでしたが、これを機会に安心して使える環境を作り直すことにしました。
ライセンス管理に注意
DAWをはじめ各種ツールには正式な購入者であることを証明するライセンスコードが付属しています。
オンラインでサーバーに情報を登録する方式や、USBキーに登録情報を記録して起動時に確認をする方法などいろいろな方法がありますが、環境を移動する場合必ずライセンスの認証を行う必要があります。
おおまかに大別すると次の3つに分けることができます。
USBキー方式
SteinbergのeLicenserやiLokがこの方式に該当します。
USB端子にキーを差し込んだ状態でライセンスコードを登録することで、USBキーに情報を登録できます。
- 長所:USBキーを差し替えるだけで新しいパソコンでもすぐにプログラムを使える
- 短所:壊れた場合の再発行にお金と時間がかかる
新しいパソコンに移行した場合でもこの方法ならキーを差し込むだけで認証済みの状態から使用することが可能です。
煩わしさはないですが、トラブルが起きた場合一番手間がかかる方式でもあります。
オンライン認証方式
WavesやVocaloid(ボーカロイド)など多くのツールがこの方式に該当します。
インターネットに接続しているパソコンでライセンスコードを入力することで、サーバーに登録情報を記憶してもらう方式です。
- 長所:インターネットに接続していれば認証が簡単にできる
- 短所:登録情報が各所に散らばるため、再インストールの手間が大きい
WavesやNative Instrumentsなどの大手ベンダーは独自の認証機構を持っています。
Waves CentralやNative Accessといった管理ツールによって管理自体はある程度柔軟にできるようになっていますが、それぞれのサーバーにアカウントを作成しなければならないため、数が増えると管理するアカウントの数が増えて非常に煩雑に紐なります。
特に複数のメールアドレスを使用している人などは、サーバー毎に違うアドレスを使用してしまったりするとパスワードを忘れた時に手も足も出なくなってしまうこともありますので「必ず」アカウントを作成した時の登録情報はメモなどに残しておくようにしましょう。
メール送信方式
プラグインや音源のダウンロード販売サイトに多い方式です。
購入時に入力したメールアドレスに対してライセンスコードが書かれたメールが送信されてきたり、認証用のファイルをダウンロードできるURLが送られてきたりします。
- 長所:手軽であり、一度登録してしまえば記録さえ残っていれば再インストール時も問題ない場合が多い
- 短所:メールやコードを紛失した場合再発行ができない場合があったり、あちこちで購入している場合ライセンスコードの再発行が大変になる
Plugin boutiqueなどのオンライン販売サイトなどで用いられている方式で、メールさえ保存してあれば次の認証も簡単なケースが多いです。
しかし、メールを削除してしまったりするとどのサイトで購入したツールか分からなくなって取返しがつかなくなったり、サイトがなくなってしまった場合購入履歴が消滅して再インストールができなくなってしまうリスクもあります。
ツールや音源を購入した時は必ず、自分が購入した製品とそのライセンスがどのように管理されているのかを確認してください。
引っ越しの時に必ず役にたちます。
ボーカロイドの引っ越し
ボーカロイドは前で紹介した2番のオンライン認証の方式に当たります。
インストール時に使用したコードはパソコンの環境に結び付けて保存され、登録したライセンスコードは使用済みとして記録されています。
そのため、一度使用したコードは引っ越しの前にディアクティベーションという操作で紐(ひも)づけを解除する必要があります。
Vocaloid4(ボーカロイド4)をインストールした環境にはディアクティベーションツールというプログラムが付属しています。
これを起動すると現在インストールされているボーカロイドの一覧が表示されます。
ここから移動するボーカロイドを選択して認証を解除していくことで、新しいパソコンでライセンス認証を行える状態にします。
この手順を忘れて別のパソコンでインストールをしてもライセンスコードが使用できないためライセンス認証できません。
Waves Centralでの認証もこれと同じ手順で、一度使用中のパソコンからライセンス情報をWavesのサーバーに返しておかなければいけないので注意してください。
Windows から Mac などへ移行する場合
まずWindowsパソコンとMacでは同じプログラムは動きません。
「Windowsで使っていたDAWを持っていきたい!」と思ってもそれはできないのです。
それが可能なのは両OSに対応していて、パッケージの中にどちらのプログラムも入っている製品でなければいけません。
またDAWだけでなく、VSTやAUといったプラグインもOSに対応したものが必要です。
製品によってはライセンスがOSで異なるものもありますので、同じ製品を再度購入しなければならない事もあり得ます。
これらのリスクや手間を考えると今までと全く同じ環境に戻したいのであればOS環境は変えない方が無難といえます。
トラブルの前に備えておこう
市販されているパソコンがWindows10に切り替わるのは時間の問題ですし、自分で組み立てている人もWindows10が標準の時代になっています。
今一度自分の使っているツールのヘルプや公式サイトのFAQを点検して最新のアップデートがないかチェックするとともに、新しいPCに買い替えたり、故障してしまって買い替えざるを得なくなってしまう前に、引っ越しが必要になった時のための計画はしっかり立てておきましょう。
ライタープロフィール
DTMer
みるくここあ
元IT技術者。
ウィンドシンセを使います。
VOCALOIDやCeVIOを使って曲を作ってみたり、ボーカルを迎えて曲を作ってみたりしています。
元々楽器の練習用にオケを作るだけだった半端なDTMerでしたがVOCALOIDに出会い、その変遷に付き合っていくうちに深みに嵌っていたただの音楽好きです。
VOCALOID 2 MegupoidとVOCALOID 3 IA、そしてCeVIO Creative StudioのONEを使用しています。
ウェブサイト:http://milkcocoa.org
Twitter:milkcocoa_org