マイクに唇が触れた瞬間にバチッ!感電を防ぐ方法
ライブやスタジオで、エレキギターを持ったままマイクに近づいたとき「バチッ」と唇に電気がきて痛い思いをしたことがありませんか?
これらは「感電」や「放電」といった電気機器によくある現象の一つです。
ただし、最悪の場合、死に至ることもありますので、正しい知識と対処法を押さえておきましょう
もくじ
なぜ「バチッ」と起きる? 原因は大きく分けて2種類
原因1:グランド(アース)が浮いている場合
唇にバチッとくる原因のほとんどのこれです。(感電です)
エレキギターを持ったまま、マイクに近づくと起こりやすい現象なのですが、なぜこのような現象が起きるのでしょうか。
マイクを鳴らす際には、ミキサーやアンプと言った機器を100Vのコンセント(日本の場合)に差すことになります。
機材の電源を入れたら、内部には100Vの電気が流れていますが、人の手に触れるところ、例えばケース(筐体)やボディや端子は、電気が流れない(アース・グランド・0V)になるように設計されています。
そして、まず以下を押さえてください。
- 地面の電圧(電位)は0V=アース(グランド)であるということ。(電圧がない状態)
- アースだからといって実際に機器を直接地面につなぐことはない
電圧(でんあつ、voltage)とは直観的には電気を流そうとする「圧力」である。
マイク・ミキサー・アンプこれら機器同士をケーブル使って繋ぐと、それぞれが繋がれひとつの音響システムになります。
1番がシールド、2番ホット(+)、3番コールド(-)とよばれています。
1番シールドは外来から飛来する電磁ノイズを乗せてアースに落とす役割があります。
2番ホット、3番コールドで音楽信号のやりとりを行います。
RCAと違ってXLRはシールド、+、-を完全に分離できることからケーブルを長く引き回してもノイズに強いと言われています。
XLRの3ピンケーブルについて
マイクやミキサーやアンプ、それぞれのアースが0Vになるように設計されていますが、必ずしも同じ基準の0Vではありません。(あくまで機器単体で見た時の0V)
ただ、すべての機器を繋ぎ、それぞれの基準が違う0Vで違う電圧になったとしても、高い方から低い方へと流れてそれぞれが同じ電圧にになります。
Vは「ボルト」と読みます。これは電圧を表す単位で、簡単にいえば電気を流すための圧力のようなものです。
水の流れにたとえるとわかりやすいでしょう。
水は高いところから低いところに流れます。
これと同じように、電気は電圧の高いところから、電圧の低いところに流れる性質を持っています。
以上のことを踏まえ、例えば「マイク・ミキサー・スピーカー」と「エレキギターとギターアンプ」の2つのシステムを使用する場合。
ギターを持って歌うときのことを想像してもらえればお分かりだと思いますが、この2つのシステムは直接繫がっているわけではないので、同じ電圧にならない可能性があるのです。(電位差が発生します)
この状態のことを「グランド(アース)が浮いている」と表現します。
「電気は電圧の高いところから、電圧の低いところに流れる性質」
ギターを持ってマイクに口を近付けると、電圧の差が発生し高い方から低い方へと電気が流れてしまいます。
これがあの唇にくる「バチッ!」の正体です。
日本の100Vでは起きないですが、海外など電圧の高い国では死に至るケースもあります。
原因2:静電気
セーターを脱ごうとしたとたん「バチバチ」したり、車のドアを開けようとした手に「バチッ!」と経験された方も多いのではないでしょうか。
冬場にいろんなところで発生するアレです。
静電気とは、物体同士の接触や摩擦によって電荷の移動が発生し、空間的に電荷の移動がほとんど無い電気のことをいいます。
http://www.keyence.co.jp/seidenki/special/master/seidenki/features01.jsp
体と電気を通さない物(衣服など)との摩擦によってに発生した静電気のそのほとんどが元の物体に残って蓄積されます。
基本的にギターの弦を押さえていれば静電気は帯電しません。
相対湿度が35%を切ると、一般的に静電気が起こりやすくなり、木綿や木などの天然素材など、本来は静電気が起こりにくいといわれている物質にも静電気が発生しやすくなるのです。
また、相対湿度が65%を超えると静電気は発生しにくくなり、発生したとしても自然に逃げていきやすくなるようです(自然放電)。
これが原因である場合は、一瞬パチッときたら(放電したら)しばらくは起こりません。
「バチッ!」ときたときの対処法
ギターケーブルの金属部分とミキサーかマイクのグランドに接続する
現場での代表的な対処法です。
「マイク・ミキサー・スピーカー」と「エレキギターとギターアンプ」の2つのシステムのクランドを直接繋ぎ、電圧の差をなくすことで、防ぐことができます。
例:挿しこみ後ギターケーブルの金属部分とマイクのボディをワニ口ケーブルなどで繋ぐ
車のバッテリーなどで使う、アースケーブルでも構いません。
無い場合は、古いケーブルなどを活用し、自作してみてもいいかもしれません。(500円〜1,000円ぐらいで作れます)
もちろん販売などはされていないので自作するしかありませんが、作りはとってもシンプルでワニ口にXLRの1番ピン(グラウンド)のみが接続されているだけです。使い方と仕組みもなかなか単純です。
フジヤマウンテン公式ブログ
https://fujiyamountain.wordpress.com/2013/05/12/時には機材の話を2-アースケーブル-/
ノイズ対策にもなります!
つまり、PAシステムに接続してそちらの完璧なアースに便乗してしまえばいいわけです。
大半のギターケーブルはプラグの部分が金属製で、それがシールドとつながっているため、プラグにワニ口を挟んで1番ピンのみ結線したXLRをミキサーやマルチボックスの空きチャンネルに突っ込むだけで、今までのことが嘘のようにノイズが消えてしまいます。
https://fujiyamountain.wordpress.com/2013/05/12/時には機材の話を2-アースケーブル-/
ギターとアンプの間にDIを鋏みこんで、そのDIのキャノンアウトをPA側に繋ぐことでも、回避できます。
マイクスポンジのカバーを付ける・ガーゼを巻く
直接、唇と金属の部分が触れないように応急処置として効果的です。
スポンジカバーは、1個200円ぐらいから売っています。
アンプの電源プラグの差込方向を変える
日本の電源はアンバランス転送なので、プラグの挿す方向によってグランドの電圧が変わってしまうことがあります。
ギターアンプの電源プラグを逆に差し込んでみたら直る事もありますので、試してみて下さい。
参考:意外と知らない!コンセントの差す方向(極性)が決まってる!?
機材のアースをとる
スタジオ、ライブハウスなど設備側で、電源アースをとる方法です。
「マイク・ミキサー・スピーカー」と「エレキギターとギターアンプ」の2つのシステムのそれぞれのアースをの電圧を0Vにしておけば、電圧の差がなくなり安心して使える状態になります。
なにかものに触れる(静電気の場合)
https://digitalphotography.wordpress.com/2009/09/15/photographing-the-noosa-jazz-festival/guitarist-close-up-2/
ギターを弾いている場合は、弦を押さえていれば静電気は帯電しません。
人間の体が金属などの電気を伝えやすいものに触れると、静電気はそっちに移動する。
この時に先端に痛みが走るのだ。
だから先端を他のものに変えれば静電気が動いても痛みは感じない。
例えば車のキーなどを持ってそのキーを金属などに触れさせると、火花が飛ぶような量の静電気がたまっていても、基本的には痛みを感じるようなことはない。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~warnerg/SHOBI/TOSS/09/ground.htm
最後に
唇や舌は電気を通しやすくさらに表面も湿っているので、比較的感電しやすい部位です。
ただし、マイクを持っているだけでは感電しないことがほとんどなので、怖がらずに安心してマイクに口を近づけて歌いましょう!
お役に立てたら幸いでございます。
ライタープロフィール
スタジオラグ
中尾きんや
スタジオラグスタッフ
ウェブサイト:https://www.studiorag.com
Twitter:kin_kinya